艦艇探検(インド海軍 D60 Mysore)

Dcim3463/DSC_3392.

D60 Mysore マイソール

D 61 DELHI 級
5,500t, 28kts, 163.00m × 17.60m × 6.40m

2002.10 海上自衛隊 国際観艦式 に来日しており今回が二度目。
前回来日時には、30mmガトリング砲が4基装備されていたが、その後の改装で、このうち2基が下ろされ、代わりに短SAMのVLSが装備され、射撃指揮装置も改められている。
改装後の写真は、Jane's FIGHTING SHIPS 2006−2007 にも掲載されておらず、実にホットな状態といえる。
また、船体の塗装も、従来はかなり濃い色で重厚さを醸しだしていたが、最近インド海軍の艦艇はライトカラーに変更されており、新塗装による初来日となった。
海上自衛隊のむらさめ級に対応する汎用艦。


インドは、独立以来、東西どちらの陣営にも属しておらず、そのため艦艇やその搭載兵器には、極めて興味深い現象が生じている。
一般に、西側の欧米と、東側のソ連側とでは、設計思想も異なっており、一見すればどちらの艦艇かが簡単に見分けがつくものだ。
が、インドの場合、独立前の宗主国であったイギリスから艦艇を購入したかと思えば、ソ連から艦艇や搭載兵器を導入している。
現有の空母も、イギリスとロシアのものであった。
注目しなければならないのは、搭載武器を各国のものを混載している点である。
東西陣営から艦艇を調達することはあっても、この場合一隻の中で東西どちらかの陣営のものに揃えるのは一般的だが、一隻の中で東西あわせて混載している。
陣営が異なれば、設計思想も異なり、インターフェースを合わせるのは並大抵のことではないが、これをきちんとこなしている。
それもそのはず、インドの科学力は侮れるものではなく、今や全世界のソフトウェアの1/3をインドで作っているという。
搭載兵器も、購入ばかりではなく、積極的に国産化している。
乗艦見学時に「ロシアのミサイルやフランスのヘリ」なんて言おうものなら「いえ、これはわが国で作ったものです」と指摘を受ける。
「真似して作るだけ」と言うのは簡単だが、プラモデルならいざ知らず、艦載兵器と言うものを、立派に使える代物に作り上げるのは実は大変なことだ。
むしろ、ソ連・ロシアの原型よりも稼働率は高いかもしれない。
わが国でも、自衛隊の航空機にはライセンス生産が多いが、F2のように元型はF16でも色々と障害を抱えて苦労するケースも少なくはない。


  1. AK-100 59口径100mm砲
    射程約21.5km、発射速度30-60発/分。 AK-100 と呼ばれるロシアのもの。艦首甲板に装備されている。
    射撃指揮装置は、艦橋上に装備されているMR-145 Lev (Kite Screech)を使用する
    Dcim3465/DSC_3524.
  2. ZR-90 Shtil (SA-N-7) 対空ミサイルランチャー
    射程約25km、セミアクティブレーダーホーミング+赤外線、マッハ3。弾数合計48。 単装のランチャーで、艦首の艦橋前と、艦尾の格納庫の上に合計二基装備されている。
    射撃指揮装置は、艦橋横、前マスト中央、後部マスト中央、それぞれ両舷に、合計6基装備されている、OP-3 (Front Dome)を使用する。
    Dcim3458/DSC_1902.
  3. RBU6000 対潜ロケット弾発射機
    12連装の対潜ロケット弾発射機で、西側のボフォースロケットランチャーに対応する。 艦橋前に二基装備されている。 射程約6km。 対潜ロケット弾は無誘導で射程も短いが、単価も安く、無誘導がゆえに落としたところで必ず爆発するので沿岸に潜む潜水艦には有利な武器である。
    Dcim3456/DSC_1653.
  4. Kh-35E Uran (SS-N-25 Switchblade Zvenda) 対艦ミサイル
    艦橋横に装備されている。 射程約130km、アクティブレーダーホーミング、マッハ0.9。 ハープーン同様のランチャーだが、片舷に二セットづつ、合計16発も搭載しているところがすごい。
    射撃指揮装置は、艦橋上最前面に装備されているBharat Apurna (Garpun-Bal/Plank Shave) を使用する。
    Dcim3459/DSC_1978.
  5. 艦橋、マスト
    艦橋の上には、100mm砲用の射撃指揮装置が見えている。
    マストトップから、ESM、三次元レーダー、水上レーダー。その下に見えているのは、射撃指揮装置(100mm砲)、両脇に射撃指揮装置(SAM)、射撃指揮装置(SSM)。
    Dcim3466/DSC_2211. Dcim3463/DSC_3398. Dcim3459/DSC_1994.
  6. 少将旗
    マストに翻る少将旗。 インド海軍東部方面艦隊司令官 R.K.ドワン 海軍少将のもの。 (Rear Admiral R.K. DHOWAN, AVSM, YSM, Flag OfficerCommanding Eastern Fleet) イギリス海軍と同様のパターンで、赤丸が一つ減ると中将旗、赤丸がないものは大将旗。
    Dcim3471/DSC_3641.
  7. Bharat Apurna (Garpun-Bal/Plank Shave) 射撃指揮装置(SSM)
    I/J-band。 艦橋上最前面に装備されている。まさに前進攻撃あるのみ。
    Dcim3458/DSC_1916.
  8. MR-145 Lev (Kite Screech) 射撃指揮装置(100mm砲)
    艦橋上に装備されている。I/J-band。
    Dcim3470/DSC_3590.
  9. 航海レーダー
    マスト下段に装備されている。
    Dcim3470/DSC_3592.
  10. MR-212/201 Vaygach-U (Palm Frond) 水上レーダー
    I-band。 マスト上段に、なぜか合計3基装備されている。マストによる死角を補うためだろうか。
    Dcim3459/DSC_1919.
  11. Salyut MR-755M2 Fregat-M2 (Half Plate) 三次元レーダー
    マスト上段に装備されている。 E-band。大型で後方にはバランサーが付いている。
    Dcim3461/DSC_9685.
  12. Bharat Ajanta Mk.2 ESM
    マストのトップに装備されている電波探知装置。インド国産の電子兵器。 ESMは、Electronic Surveillance Measuresで、電波探知装置。
    Dcim3470/DSC_3612.
  13. TQN-2 ECM
    イタリアが開発したECM。パルス及びノイズによるもの。 ECMは、Electronic Countermeasuresで、電波妨害装置。 マスト中央に装備されている。
    Dcim3461/DSC_9690.
  14. 衛星通信アンテナ
    両舷に異なるタイプが装備されている。右舷側はJRC日本無線のもので、インマルサット用。

    左舷側
    Dcim3470/DSC_3626.
    右舷側
    Dcim3468/DSC_2345.
  15. OP-3 (Front Dome) 射撃指揮装置(SAM)
    艦橋横、前マスト中央、後部マスト中央、それぞれ両舷に、合計6基装備されている。 一見、Bass Tilt 射撃指揮装置と似ているが、別物。 H/I-band。
    Dcim3458/DSC_1901.
  16. 533mm魚雷発射管
    艦中央の煙突間に装備されている。 5連装で、ウェーキホーミング魚雷、対潜魚雷を発射する。
    Dcim3456/DSC_1668.
    ウェーキホーミング魚雷というのは、艦船の航跡による海面の変化を利用したもので、魚雷が航跡を横切ると自動的に反転し、これを繰り返すことによっていずれ船体に命中させるというもの。
    Pict_0215.
  17. Barak 短SAM VLS
    イスラエルの個艦防御用対空ミサイル。 後部マスト基部横に装備されている。 30mmガトリング砲を撤去して装備されたもの。 射程約10km、アクティブレーダーホーミングor光学、マッハ2。
    Dcim3466/DSC_2217. Dcim3471/DSC_3643. Dcim3471/DSC_3644.
  18. 射撃指揮装置(短SAM VLS)
    後部マスト基部横に装備されている。 イスラエルの個艦防御用対空ミサイルBarakのシステム構成品で、銃砲の射撃指揮も可能。 短SAM VLS装備に伴い、30mmガトリング砲用を撤去して装備されたもの。I/J/K-band。
    Dcim3470/DSC_3603.
  19. AK-630M 54口径30mmガトリング砲
    後部マスト基部に4基装備されていたが、短SAM VLS装備に伴い、艦首側の二基は撤去されている。 射程約2km、発射速度3000発/分。
    Dcim3457/DSC_1726.
  20. MR-123 Vympel (Bass Tilt) 射撃指揮装置(30mmガトリング砲用)
    H/I-band。AK-176(76mm砲)、AK630(30mm機関砲)用の射撃指揮装置で、1基で2門の制御が出来る。 当初、後部マスト基部横に装備されていたが、短SAM VLS装備に伴い撤去された。I/J-band。
    Dsc_0832.
  21. 舷側スタビライザーガード
    大型のスタビライザーが装備されているためか、舷側中央にスタビライザーガードが2基装備されている。
    Dcim3466/DSC_2189.
  22. 名板
    艦尾舷側に設置されている。
    Dcim3463/DSC_3423.
  23. 後部マスト
    トップに対空レーダー、中央両舷に射撃指揮装置(SAM)が装備されている。 また、マスト基部前面甲板には、磁気羅針盤が装備されている。
    Dcim3456/DSC_1647.
  24. Bharat/Signaal RAWL(LW08) 対空レーダー
    後部マストに装備されている。 L-band。重量5t、150kw。オランダのタイプ。
    Dcim3460/DSC_2055.
  25. PK-2 チャフ、フレア発射機
    直径152mmで、2本装備できる。 格納庫前方に装備されている。 ロシアの大型艦に搭載されているもの。
    Dcim3457/DSC_1709.
  26. 礼砲
    格納庫上に装備されている。 今回の訪日に際して、観音崎沖で礼砲交換に使用された。
    Dcim3457/DSC_1721.
  27. 格納庫
    大型の格納庫で、ヘリが2機搭載できる。
    Dcim3463/DSC_3411.
  28. SH3 Mk.42B ヘリコプター
    シーキングとして有名なヘリコプター。
    Dcim3465/DSC_3564.
  29. Chetak ヘリコプター
    フランスのアルエットを国産化したもので、ハープーンの射撃も可能という。
    Dcim3465/DSC_3555. Dcim3469/DSC_9826.
  30. ヘリ甲板
    中央の丸い網状のものは着艦支援装置。その前方に格納庫に向けて軌条が敷かれている。
    Dcim3461/DSC_9636. Dcim3461/DSC_9641. Dcim3463/DSC_3417.
  31. 艦尾
    中央に見えるのはVDS。前回来日時には、搭載されていなかった。 VDSは、India/Garden Reach Model 150/750。
    Dcim3461/DSC_9646.
  32. 艦尾軍艦旗
    国際観艦式来日時と、デザインが変っている。
    Dcim3470/DSC_3615.
    国際観艦式来日時
    Dsc_0795.

本項は J-ships (イカロス出版) 第32号掲載用として整理したものを中心に掲載しており、更新なき場合、2008年4月のデータにもとずいています。
また、掲載出版内容と異なる部分も多々あります。


参考
艦艇探検
艦艇探検(DDG168 たちかぜ)
艦艇探検(DD102 はるさめ)
艦艇探検(中国人民解放軍海軍 167 深セン)
艦艇探検(インド海軍 D60 Mysore)
艦艇探検(インド海軍 P46 Kuthar)
艦艇探検(FSG25 KASTURI)
艦艇探検(SSN758 ASHEVILLE)
J-ships (イカロス出版) 第32号




戻る TOPに戻る

新規作成日:2009年1月2日/最終更新日:2009年1月2日